【原因と対策】航空局がドローンスクール(徳島県)を厳重注意!初事例【登録講習機関】

ドローン登録講習機関が航空局から厳重注意で実名公表を受けた事例とは

令和6年10月25日、国土交通省航空局は、徳島県に本社を構える登録講習機関(ドローンスクール)に実名で、厳重注意を行いました。

同社が行う無人航空機講習に複数の不適切な事項が認められたためです。

一方で、今回公表された不適切項目の中には、他のスクール様でも同様の問題が見られる可能性があるものも含まれていました。

この記事では、国内初事例として、登録講習機関(ドローンスクール)に出された航空局の厳重注意の内容を分析し、その原因と対策を探ります。

リーガライト行政書士法人では、再発防止のための具体的な対策を提案することで、技能証明制度の信頼性向上に努めます。

行政書士 中島北斗

この記事では、国内初事例として、登録講習機関(ドローンスクール)に出された航空局の厳重注意の内容を分析し、その原因と対策を探ります。技能証明制度の信頼性を揺るがす、業界全体にとって対岸の火事では済まされない重要な問題です。ぜひ本記事を参考にして一層の法令、規程等の内容理解と遵守をいただけますと幸いです。

確認された不適切事項

今回、国土交通省航空局から出された厳重注意は以下のとおりです。

  • 入学申請者に提出を求める申請書添付書類の不備及び不保存
  • 審査員研修を受講したのち審査員研修修了証明書の発行を受ける前の審査員による修了審査の実施
  • 実地講習における必修履修科目の未実施
  • 本来修了審査に合格していない者に対する修了証明書の発行
  • 通達改正に伴う事務規程変更の未実施
  • 事務規程に規定されていない講習料金の徴収
  • 管理者による適切な定期確認の未実施
  • 模擬飛行計画を提示しない机上試験問題の使用
  • 修了審査の口述試験における審査員による点検項目の指示
  • 実地講習実施計画書に記載すべき事項の未記載
  • 帳簿に関する資料の別個での管理等
  • 講習記録簿における記載事項の未記載
  • 日常点検記録簿の記載方法の誤り
  • 修了審査等における保護眼鏡の未着用

この厳重注意は「国空無機第57901号」として航空局から実名で事業者宛に通知されています。

国空無機第57901号:厳重注意通知書

これからこの詳細に迫っていきます。

入学申請者に提出を求める申請書添付書類の不備及び不保存

無人航空機の登録講習機関及び登録更新講習機関に関する省令(令和4年国土交通省令第 59 号。以下「省令」という。)第 12 条第2項においては、登録講習機関は入学申請書及びその添付書類を備え、無人航空機講習を修了した日から3年間保存することが規定されている。当該規定を踏まえ、貴社の無人航空機講習事務規程(以下「事務規程」という。)6-2 において入学申請書の添付書類について規定されており、民間技能認証等を有する者であって講習科目の一部の減免を受けようとする者は、該当する民間技能認証等の写し等を提出させることとされている。しかしながら、貴社においては講習科目の一部の減免を受けようとする者の民間技能認証等の写しが備えられておらず、また、保存されていなかった。

国空無機第57901号:厳重注意通知書より

入学申請書と添付書類とは

まず、登録講習機関は、「入学申請書」「その添付書類」を、無人航空機講習を修了した日から3年間保存する必要があります。

入学申請書は事務規程の「第6章 受講資格及び受講申請並びに講習事務手数料」の「6-2受講申請」という項目で提出した様式となります。

そして、添付資料とは同項目に記載されているものです。

大きく2つに分けることができます。

  • 本人確認資料
  • 経験者を示す資料

ただし、ここの記述は、あくまでも記載例ですので、法的要件を満たしていれば、提出すべき資料の変更は可能です。

リーガライト行政書士法人では、設立後の運営効率を考えた「スマート事務規定®」にて、実運用から離れたサンプル事務規程を、現場が使いやすく変更しています。

当社ではこれまでの経験から、スクールの実運用と国交省の求める要件を照らし合わせ、必要最低限で効率的な運営ができる事務規程を提供しています。

講習科目の一部の減免を受けようとする者とは

講習科目の一部の減免を受けようとする者とは、ここでは「経験者」のことを指しています。

そして、講習科目の一部の減免を受けようとする者の要件、つまり経験者の要件は、事務規程「第7章 受講等の免除」の「7-1 講習科目免除の記録」より、各登録講習機関が決めることができます。

そのため、例えば、「HP掲載団体での民間技能認証等を有する者」に限らず「10時間以上の回転翼航空機の飛行経験を持つ者」「航空局の許可承認を有している者」などとすることも可能です。

ただしこの場合、それぞれ対応した証明資料を受講生から提出してもらい、3年間、保存する必要があります。

教訓:経験者で入学する受講生については①証明資料を確認する、そして②3年間保存する

今回の厳重注意事例では、「経験者を証明する資料」つまり「HP掲載団体での民間技能認証」などが保存されていなかったということでした。

※10時間以上の回転翼航空機の飛行経験を持つ者を経験者の要件としている場合は「飛行日誌」等。

ここから得られる教訓は以下のとおりです。

  • 経験者で入学を受け付ける場合、経験者を証する資料を確認する。
  • その資料を3年間保存する。

その他にも、本人確認資料についても確認と保存が必要ですので、注意しましょう。

ドロビーでは、入学申し込みフォーム時点で、本人確認資料や経験者を示す資料を回収することができます。

また監査資料チェック機能では不足資料を一覧で見ることも可能です。

審査員研修を受講したのち審査員研修修了証明書の発行を受ける前の審査員による修了審査の実施

航空法(昭和 27 年法律第 231 号。以下「法」という。)第 132 条の 72 及び省令第6条第4号に基づき、無人航空機講習事務の実施に際して、登録講習機関の講師は、登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示(令和4年国土交通省告示第 951 号。以下「告示」という。)で定める基準に適合する研修を受講することが求められており、告示第2条第3項第2号においては、審査員研修修了証明書を保持している者に限り、登録講習機関の修了審査員として選任することとされている。しかしながら、貴社においては審査員研修は受講していたものの、審査員研修修了証明書が発行される前に、当該修了証明書を所有していない者が修了審査員として修了審査を行っていた。

国空無機第57901号:厳重注意通知書より

審査員研修とは

ここでいう審査員研修とは、なじみ深い言葉で言い換えると、「修了審査員研修」のことです。

すでに登録を受けている登録講習機関が、修了審査員を追加する場合の手順は以下のとおりです。

  • 講師要件を満たした者を選定する
  • 修了審査員を兼任する講師として、登録申請書類の再提出と事務規程の変更
  • 登録講習機関が講師研修を実施
  • 日本海事協会の修了審査員研修をオンラインで受講する
  • 講師研修、修了審査員研修の修了証明書を受け取る
  • 講師業務/修了審査員業務の実施

ここからわかるとおり、修了審査員は、登録講習機関の講師の講師要件も満たしていることが条件です。

再提出すべき登録申請書類と事務規程の変更点は以下のとおりです。

国空無機第 233628 号:登録講習機関の登録等に関する取扱要領より

ここには記載されていませんが、事務規程の緊急連絡先も変更する必要があります。

教訓:修了審査員は日本海事協会の①修了審査員研修を受け、②修了証明書をもらってから業務に従事する

今回の事例では、修了審査員研修は受講していたものの、修了審査員研修修了証明書が発行される前に、その方が修了審査員として修了審査を行っていたというものです。

登録講習機関の管理者は、修了審査を行う者が、しっかりと講師研修と修了審査員研修を受け、それぞれ修了証明書が発行されているかどうかを確認のうえ、従事を認めるなどの対策が必要となります。

ドロビーでは、管理者研修、講師研修、修了審査員研修の管理画面がありますので、受講の有無を一元管理できます。

実地講習における必修履修科目の未実施

法第 132 条の 72 及び省令第6条第1号に基づき、無人航空機を飛行させる能力を習得させるための課程に係る必要履修科目の教育時間等の教育の内容及び教育の方法が告示で定める基準に適合するものであること等が求められている。しかしながら、貴社においては、一等に係る実施講習において、告示に規定される履修科目の一部を修了していない者に対して、修了審査を行い、修了証明書が発行されていた。

国空無機第57901号:厳重注意通知書より

登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示とは

登録講習機関は、行うべき講習が告示で指定されています。

https://www.mlit.go.jp/koku/content/001743806.pdf

告示は縦書きで非常に読みにくいですが、登録講習機関はこれに沿って、学科と実地を含め、必修時間と必修科目を教える必要があります。

特に実地については、等級以外にも、夜間、目視外、25kgでも必修科目が変わるので注意が必要です。

これらは事務規程提出時に、「講習時間と科目の資料」や「時間割」として提出するのですが、問題は、不備があっても事務規程が受理されてしまうケースがあるということです。

受理されたから告示を下回る時間や科目で講習を行ってもいいというわけではないので注意しましょう。

教訓:すでに事務規程が受理されていても、「講習時間と科目」と「時間割」を今一度確認する。

今回は、一等に係る実地講習において、必修科目を修了していない者に対して、修了審査を行い、修了証明書を発行したということでした。

ちなみに一等基本と夜間の必修科目は以下のとおりです。

これに加えて、初学者と経験者で必修時間が異なりますので注意しましょう。

ドロビーの電子講習記録簿では、受講者情報から必須時間と必修科目を自動で生成します。

各コースにおいて、不足科目も表示されるから、監査時に指摘されやすい必須科目の講習モレも防止できます。

本来修了審査に合格していない者に対する修了証明書の発行

法第 132 条の 72 及び省令第6条第9号に基づき、修了審査に合格した者に対してのみ修了証明書を発行することが求められており、無人航空機操縦士実地試験実施基準等(以下「実施基準等」という。)において修了審査の実施方法を規定している。実施基準等においては、採点は100点からの減点式採点法とし、各試験科目終了時に、一等無人航空機操縦士実地試験であれば80点以上、二等無人航空機操縦士実地試験であれば70点以上の者を合格とすると規定している。しかしながら、貴社においては修了審査において適切な採点方法がとられておらず、実施基準等において定められる採点方法では合格基準点に達していない者に対して修了証明書が発行されていた。

国空無機第57901号:厳重注意通知書より

無人航空機操縦士実地試験実施基準とは

登録講習機関は国の業務を一部行える分、その修了審査の方法などにも基準が設けられています。

その修了審査の基準を定めているものが、無人航空機操縦士実地試験実施基準となります。

無人航空機操縦士実地試験実施基準

一等無⼈航空機操縦士実地試験実施細則

二等無⼈航空機操縦士実地試験実施細則

教訓:今一度、無人航空機操縦士実地試験実施基準を再確認

今回、修了審査において適切な採点方法が行われていなかったと指摘がありました。

無人航空機操縦士実地試験実施基準には、減点方法に加え、修了審査の手順やコースの設定方法が記載されているので、今一度、確認をしましょう。

ドロビーでは、採点解答用紙の提出などにも不備がないようにイラストなどで提出すべき資料をわかりやすく解説しています。

その他の不適切な事項についてもこれから順次解説します。

SNSをフォローいただければ、通知が届きますので、よろしくお願いします。

法令に則った運営には時間が掛かる

そのため、一層の法令、規程等の内容理解と遵守の意識が必要です。

登録講習機関は、国の業務を一部行うことができるドローンスクールであり、運営方法や具備すべき資料などが法定されています。

ただ、法定された方法で行うには、労力がかかります。

リーガライト行政書士法人は、登録講習機関業務をシステム化することで、適正かつ効率的なスクール運営が可能にするDroby(ドロビー)を提供しています。

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