行政書士 中島北斗
この記事では、ドローンの規制を知りたいけど規制が多すぎてよくわからない方に向けて、「許可が必要な場所・飛行方法」「規制の調べ方」「規制の整理と重要度」「許可の取り方」「許可が不要なケース」などを解説いたします。この記事を読めば、適法にドローンを飛行することができるようになります!
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ドローンの規制を明確にするため、フローチャートを用意しました。
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ドローンを飛ばすのに必要な許可とは?航空法だけじゃない!?
ドローンを取り巻く規制に、航空法、小型無人機等飛行禁止法、民法、河川法、電波法、道路交通法、港則法、海岸法、海上交通安全法、都道府県や市町村条例、都市公園法、自然公園法航空法、重要文化材保護法など多岐に渡ります。
正直、ごちゃごちゃしていて、よくわからない…
そこで、これらの規制を重要度と適用頻度でカテゴライズすると、以下の3点にまとめることができます。
航空法→小型無人機等飛行禁止法→管理者の承諾の順で確認しよう
このようにカテゴライズして順番に考えることで、ムダなくモレれなく規制をチェックできます。
この考え方は、私が実際にお客様の飛行案件の規制調査をするときにも使っているので、有効性は実証済みです!
それでは1つ1つ、解説していきます。
航空法では「機体登録」と「許可承認」が必要
航空法上、ドローンの飛行には、「機体登録の義務」と「特定飛行の規制」が関係してきます。
それぞれ詳しく見てみましょう。
「機体登録」はドローンを購入したらすぐに行おう
航空法の改正により、令和4年6月20日以降、未登録のドローン(100g未満のものは除く)は原則、屋外で飛行することができなくなりました。
以下のケースでは登録は不要ですが、かなり限定的ですので、現実には、「未登録のドローンは外で飛行ができない」と言えます。
登録が不要なケース
ちなみに重量はドローン本体の重量とバッテリー重量の合計を指しており、バッテリー以外の取り外し可能な付属品(プロペラガード等)の重量は含まれません。
先程も申し上げたとおり、登録不要なケースは限定的ですので、ドローンを購入したらすぐに機体登録を行いましょう。
100g未満ドローンも許可が必要なケースとは?知らずに違反しないために
許可申請が必要な特定飛行とは
特定飛行とは航空法上、飛行が禁止されている場所と方法です。
航空法では以下10個の特定飛行が規定されています。
10個の特定飛行
<飛行場所の規制>
<飛行方法の規制>
平成27年に航空法が一部改正され、ドローンやラジコン機等の無人航空機の飛行ルール(航空法第11章)が新たに導入されました。
無人航空機とは、100g以上のドローン(マルチコプター)、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプター等です。
この改正を受け、「屋外で」、人口集中地区(DID)、夜間飛行、目視外飛行などの「特定飛行」を行う場合は、原則、許可承認が必要となりました。
特定飛行を行わない場合は、許可承認は必要ありませんが、「30m接近飛行」や「目視外飛行」は、実務上、ほとんどのケースで必要になってきますので、ドローンを購入したら許可承認も取得することをおすすめします。
航空法上の許可の取得をおすすめする理由
ドローンの飛行許可が必要な場所とその調べ方
航空法上の許可が必要な場所は以下の4つです。
<許可が必要な場所>
<承認が必要な方法>
それでは特定飛行のうち、飛行場所の規制である「人口集中地区(DID)、空港周辺飛行、高度150m以上飛行、緊急用務空域飛行」について、細かく見ていきましょう。
具体的な説明と規制に該当するか調べる方法について解説していきます。
人口集中地区(DID地区)での飛行
令和2年度の国勢調査の結果による人口集中地区の上空で飛行を行う場合は、許可が必要です。
※令和4年6月25日より「平成27年の国勢調査の結果による人口集中地区の上空」から「令和2年度の国勢調査の結果による人口集中地区の上空」が適用されることとなりました。
人口集中地区は、人又は家屋の密集している地域です。国勢調査の結果から一定の基準により設定されます。
この地域での飛行は、落下した場合に人やモノなどに危害を及ぼすおそれが高いため、許可が必要となります。
<人口集中地区(DID地区)の調べ方>
① 【令和2年度版】地理院地図にアクセス。
② 飛行させる住所を入力
③ 飛行場所が赤色か確認
人口集中地域は、赤色で表示されます。駅や住宅地が密集している場合は、ほとんどが赤色エリアです。
下の画像からも、駅周辺は大体が人口集中地区に該当します。
自分の土地が人口集中地区だった場合も許可は必要。
自分の庭などが人口集中地区である場合も国交省の許可が必要となります。
ただし、ドローンに紐を付けて飛行する等、一定の条件下であれば許可なく飛ばせるケースがあります。
自分の土地で試しに飛ばしたい場合や飛行練習を行う場合は以下の記事を参考にしてください。
「空港周辺」では許可が必要 ※100g未満のドローンにも適用
※一番下の「小型無人機等飛行禁止法」は航空法とは別の法律ですが、念のため記載しております。
専門用語が並んでいて分かりにくいと思いますが、国は、空港周辺の飛行禁止エリアを可視化するオンラインシステムを提供しています。
以下に調べる方法をまとめています。
<空港周辺の調べ方 (航空法)>
空港等の周辺に該当しているかどうかは、国土地理院のホームページにおいて確認可能です。
① 地理院地図にアクセス。
② ポップアップのOKをクリック
③ 飛行場所を探す。
広域図が表示されるので、飛行させる場所を探します。
④ 飛行場所が緑色か確認。
空港周辺の飛行禁止区域は緑色または紫で表示されます。
空港周辺(緑色エリア)の場合は、飛行高度によって、許可が不要な場合があります。
ただし、2019年9月18日の改正により、紫色のエリア(主要な空港周辺)では許可不要な高度という概念がありませんので、注意しましょう。
許可が不要な高度については、インターネットで調べることもできますが、難しい場合は「空港付近で飛行させる場合は空港事務所へ確認」も可能です。
<空港周辺の調べ方 (小型無人機等飛行禁止法)>
小型無人機等飛行禁止法は、航空法とは別の法律です。
本記事にて後述しますが、簡単に調べ方をお伝えします。
小型無人機等飛行禁止法により禁止されている飛行範囲の地図については、DIPS2.0の飛行計画通報機能にて確認することが可能です。
確認にはDIPS2.0のアカウントの作成が必要です。
① DIPS2.0にアクセス。
② メインメニューから「飛行計画の通報・確認へ」をクリック
③ 「飛行計画の登録」をクリックし、「新規通報」をクリック
③ 飛行場所を探す。
広域図が表示されるので、飛行させる場所を探します。
④ オレンジ枠または黄色枠内が、小型無人機等飛行禁止法の対象空港。
小型無人機等飛行禁止法上、オレンジ枠がレッドゾーンと言われ、黄色枠がイエローゾーンと言います。
それぞれの違いや、飛行させるための手続き方法については以下のリンクをご確認ください。
「高度150m以上」では許可が必要 ※100g未満のドローンにも適用
地表・水面から150m以上の高さでドローンを飛行させる場合は許可が必要です。
目安として、「電柱は9~13m」「あべのハルカスは300m」です。
ここにいう「高度」とは、「地表」から「ドローン」までの高さのことです。
つまり、標高1,000mの山の頂上から飛行させる場合でも、そこから高度150m未満であれば、許可なく飛行が可能です。(垂直に飛行した場合に限ります)
以下の図のように許可なく飛行できる空域は、地表に沿っていると考えることができます。
物件から30m以内の空域であれば、高度150m以上でも許可は不要
高層ビル、煙突、鉄塔などの構造物の周辺は、航空機の飛行が想定されません。
そのため、物件から30m以内の空域については、高度150m以上の飛行であっても、国交省の許可が不要となります。
具体例として以下の画像が参考になります。
原理的には、二つの構造物を繋ぐケーブル(送電線等)から30メートル以内の空域も禁止空域から除外されます。
「緊急用務空域」では許可が必要 ※100g未満のドローンにも適用
緊急用務空域は、常に指定されているというわけではありません。
警察、消防活動などの緊急用務を行うため、航空機の飛行が想定される場合に、無人航空機の飛行を原則禁止する空域(緊急用務空域)が一時的に指定されます。
国交省から許可承認を得ている場合も、ここでの飛行は禁止されます。
なお、飛行の目的が「災害等の報道取材やインフラ点検・保守など、『緊急用務空域』の指定の変更又は解除を待たずして飛行させることが真に必要と認められる飛行」に限り、個別申請を行い、許可が下りる可能性はあります。
指定された際は、国交省のHPやX(旧twitter)等で公表されます。
注意すべき点は100g未満のドローンにも適用されるということです。
<緊急用務空域の調べ方>
【X(旧twitter)で確認】
Tweets by mlit_mujinki【国交省HPで確認】
国交省HPのトップページで指定の有無を確認することができます。
https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html
承認が必要なドローンの飛行方法
航空法では、飛行場所の規制だけでなく、飛行方法についても規制がされています。
飛行場所の規制がなくても、以下の飛行方法の規制に該当する場合は、国交省の承認申請が必要になります。
<許可が必要な場所>
<承認が必要な方法>
それでは、飛行方法の規制を詳しく見ていきましょう。
「夜間飛行」は承認が必要
夜間にドローンを飛ばすには国交省の承認が必要です。
「自宅の庭」や「海上」であっても、夜に飛ばすことはできません。
また日の出前も夜間という扱いのため、早朝のフライトも夜間飛行に該当する可能性があります。
夜間の定義は、国立天文台が発表する「日没時刻」から「日の出時刻」の間となります。
そのため、地域と時期により異なります。
日出・日没時間の調べ方
国立天文台の「こよみの計算」にて、日の出と日没時間を調べることが可能です。
「目視外飛行」は承認が必要
目視外飛行とは
目視外飛行とは、飛行しているドローン本体を見ずに、操縦機のモニター等で外の様子を確認しながら飛行する方法です。
上記のようにドローンを直接目視できない飛行を行う場合は承認が必要です。
誤解も多い承認ですので、しっかりと確認しましょう。
目視外飛行の具体例
空撮のためドローン飛行中にモニター映像を確認する必要がある場合は、「目視外飛行」の承認が必要となります。
空撮・点検を行う場合は操縦者がカメラ映像を確認して飛行するケースが多いため、重要な承認となります。
モニターを一瞬でも見たら目視外飛行になる?
この点は改正当初から 2023 年終わり頃まで 、国交省担当官毎に回答が異なってました。
ある時は安全確認のための一瞬の確認であれば目視外飛行にならないと言われたり、ある時はいかなる場合も一瞬でもモニターを見れば目視外飛行なると言われたりです。
ただ令和 5 年 9 月に行われた「カテゴリー Ⅱ ( レベル 3 ) 飛行の許可・承認中請に関する説明会」にて、公式見解 ( 文書あり ) がなされました。
令和6年6月に行われた「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」の改正でも、上記の考え方が明記されました。
以上をまとめると、以下の 2 点を満たすモニター確認については、ドローン飛行中であっても目視外飛行には該当しないという取り扱いです。
- 安全な飛行のために必要なモニター確認であること(バッテリーの確認、電波状況の確認、機体の位置確認など)
- 瞬間的であること
ただし、上記2点どちらも満たす必要がありますので、一方を満たすだけの飛行は、目視外飛行に該当します。
【 目視外飛行に該当する例 】
・しっかりとカメラに被写体が写っているか確認をするため、瞬間的にモニター映像を確認する(安全な飛行のために必要な確認ではないため)
・機体の位置情報を確認するためにモニターを注視する(安全な飛行には必要であるが、瞬間的ではないため)
「人やモノに30m接近する飛行」は承認が必要
人やモノ(物件)から30m以上の距離を保って飛行できない場合は承認が必要です。
リーガライト行政書士法人では「30m接近飛行」と呼んでおります。
これは、ドローンを中心に半径30mの球体をイメージするとわかりやすいです。
下画像のように30m球体の中に人やモノが入る場合は、この禁止事項に該当します。
ここで重要になるのが、「人」と「モノ」の定義です。
操縦者、関係者、操縦者または関係者の所有する物件は、航空法上、距離を保つべきものには該当しないため、30m球体の中でも承認は不要です。
詳しく定義を見ていきましょう。
30m以上の距離を保つ必要がある「人」とは
人の定義は、無人航空機に係る規制の運用における解釈についてという資料に記載があります。
「人」とは、操縦者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している者)以外の者(第三者)をいう。
無人航空機に係る規制の運用における解釈について
つまりは人=第三者となります。
そして、「第三者」は「無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与していない者」と定義されています。
具体的には、操縦者本人、補助者、操縦者と共通の飛行目的を持っている関係者(イベントエキストラ、競技大会スタッフなど)以外の者が第三者となり得ます。
第三者ではない者に30m近づくことについて、国交省の承認は必要ありません。
30m以上の距離を保つ必要がある「モノ」とは
モノの定義も、無人航空機に係る規制の運用における解釈についてという資料に記載があります。
「物件」とは、次に掲げるもののうち、操縦者及びその関係者(無人航空機の飛行に直接的または間接的に関与している者)が所有又は管理する物件以外のもの(第三者の物件)をいう。
a) 中に人が存在することが想定される機器(車両等)
b) 建築物その他の相当の大きさを有する工作物
無人航空機に係る規制の運用における解釈について
つまり、30m以上の距離を保つ必要があるモノとは、a)又はb)に該当する第三者のモノとなります。
a)又はb)に該当する場合でも、操縦者、補助者、関係者のモノの場合は、30m近づくことに国交省承認は必要ありません。
それではa)とb)の具体例を見ていきましょう。
a) | 中に人が存在することが想定される機器(車両等)の具体例 | 自動車、鉄道車両、軌道車両、船舶、航空機、建設機械、港湾のクレーン等 |
該当しない具体例 | 土地(田畑用地及び舗装された土地(道路の路面等)、堤防、鉄道の線路等であって土地と一体となっているものを含む。) | |
b) | 建築物その他の相当の大きさを有する工作物の具体例 | ビル、住居、工場、倉庫、橋梁、高架、水門、変電所、鉄塔、電柱、電線、信号機、街灯等 |
該当しない具体例 | 自然物(樹木、雑草等) |
所有者(管理者)から承諾を得た場合は30m接近飛行は許可なく可能か
結論から申し上げると、所有者(管理者)から承諾を得ただけでは、30m接近飛行は許可は不要となりません。
不要と判断するには、その所有者(管理者)が関係者である必要があります。
関係者の定義のひとつに「操縦者と共通の飛行目的を持っている」ということが挙げられます。
そのため、例えば公園管理者から園内の空撮依頼された場合、そこにある街灯は、空撮という共通の飛行目的をもっている所有者(管理者)=関係者のモノとなりますので、国交省の30m接近飛行の承認は不要です。
しかしながら、単純に操縦者が公園内で飛行したくて、管理者から承諾を得て飛行する場合は、公園管理者は、空撮という共通の飛行目的をもっている所有者(管理者)とは言えない=関係者ではないと判断され、30m接近飛行の承認が必要です。
原則、離発着時は30m以上離す必要がある
「30m接近飛行の承認」を取得した場合であっても、離着陸の際はドローンの「周囲30mの範囲内に人や物件が存在しないこと」が原則、飛行の条件となります。
簡単に言ってしまえば、航空局標準マニュアルに記載があることが理由ですが、本質的には以下が理由として挙げられます。
とくに建物やクルマなどの付近では、機体が不安定になりやすいです。
これは、障害物が風の流れを変えることで発生するダウンドラフト(下降気流)や乱流が原因です。
これらにドローンがさらされると、機体が急激に揺れたり、不規則な動きをしたりします。
リーガライト行政書士法人では、上記を踏まえ、追加的な対策をとることで、離発着時に30m以上離すことができない場合の飛行マニュアルを作成しています。
詳しくはこちらをご確認ください。
イベント飛行
たくさんの人が集合する催し(イベント)の付近でドローンを飛行させる場合は、国交省の承認が必要です。
実のところ、イベントの定義はかなり判断が難しい部分があります。
明らかになっている考え方を抑えつつ、判断することがポイントです。
イベントの具体例
まず無人航空機に係る規制の運用における解釈についてという資料では、イベントの具体例として以下を上げています。
祭礼、縁日、展示会、プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会、屋外で開催されるコンサート等のイベント、ドローンショー(自社敷地内、無人の競技場内等、第三者の立入管理措置が行われていることが明白である場所での事前練習や企業向けの配信用撮影等を除く)、花火大会、盆踊り大会、マラソン、街頭パレード、選挙等における屋外演説会、デモ(示威行為)
「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」を一部改編して記載
一般的にイベントとして想像されるものは該当してきます。
ただ屋内のイベントについては、航空法の対象外となるため、許可承認は不要です。
※天井がないスタジアムは屋外という扱いです。
イベントに該当しないケース
以下のケースでは、イベント飛行の許可は必要ありません。
「不特定多数」ではなく「多数」の者が集まる催し場所が規制の対象です。
「住所を確認し参加者を特定すればイベントにはならない」という解釈がありますが、これは誤りです。理由は住所等で人を特定しても、関係者の定義には当てはまらないためです。
危険物輸送
危険物を運ぶ場合には、承認が必要です。
ここでは、どのようなものが危険物に該当するかが重要になります。
【危険物の定義】
危険物に該当するもの | 火薬類、高圧ガス、引火性液体、可燃性物質、毒物、刃物等 |
---|---|
危険物に該当しないもの | 飛行のために必要なもの(例えば、燃料や電池、パラシュート開傘ために必要な火薬類や高圧ガス) |
農薬散布をする場合は、この承認が必要です。
ドローンでの物件投下
物件をドローンから落とす場合は、承認が必要です。
物件の投下は地上にいる人へ危害を及ぼす恐れがあり、投下前後で重量が大きく変わるため、操縦技術を要するからです。
水や農薬等の液体や霧状のものも物件投下に該当します。
農薬散布を行う場合はこの承認が必須です。
また救助活動のためドローンから浮き輪を投下する場合も、物件投下の承認が必要となります。
ただし、ドローンを使って物件を「地上の人に受け渡すこと」「置くこと」は、物件投下には該当しません。
例:荷物の受け渡し、測量機器の設置
ドローンの許可承認が不要なケース
ここまでで10個の特定飛行を解説しました。
しかし、これらの飛行も、以下の場合では許可承認が不要となります。
屋内での飛行:10個の特定飛行すべてが対象外
屋内では、航空法の規制の対象外であるため、「人口集中地区内にある建物の中で飛行する」「空港周辺内にある建物の中で飛行する」「緊急用務空域内に指定された建物内で飛行させる」場合でも許可が不要となります。
また、イベント上空や目視外飛行などの飛行方法の規制に関しても対象ではなくなるため、許可が不要です。
具体的な屋内の例は以下のとおりです。
ちなみに屋内で行われるイベントには、航空法は適用されないため、イベント上空の飛行許可は不要です。(天井がない場合は屋外という扱いとなるので注意が必要です。)
ただし、「施設管理者が飛行を禁止している場合」や「施設管理者に無断で飛行」はやめましょう。
また誤解されがちですが、自分の庭に関しては、屋外なので規制の対象になります。
係留飛行:5個の特定飛行が対象外
係留飛行+立入管理措置で、以下の飛行許可承認が不要となります。
係留飛行+立入管理措置で、許可承認が不要となる飛行 | 係留飛行+立入管理措置でも、許可承認が必要な飛行 |
---|---|
・人口密集地上空(DID)における飛行 ・夜間飛行 ・目視外飛行 ・30m接近飛行 ・物件投下 | ・空港等周辺 ・高度150m 以上の飛行 ・イベントでの飛行 ・危険物輸送 ・緊急用務空域 |
係留飛行とは、ドローンを十分な強度を有する紐等(30m以内)で結んだ飛行を指します。
係留飛行については以下の記事で詳しく解説してしますので、参考にしてください。
ドローンの許可申請は「個別申請」か「包括申請」
意外と「許可・承認が必要だった」という方が多いと思います。
現状、ドローンで空撮などを行う場合は、ほとんどのケースで必要になるかと思います。
特定飛行に該当する場合は、国交省に許可申請を行います。
航空法上のドローンの許可申請には「個別申請」と「包括申請」の2通りがあります。
それぞれ飛行の形態や場所に違いがあるので、ご自身の飛行目的に応じて、どちらかまたは両方の許可の取得が必要になります。
申請の方法については以下の記事に詳細をまとめております。
小型無人機等飛行禁止法で規制されるエリアは意外と多い
10個の特定飛行は「航空法」に基づく規制でした。
ドローンを取り巻く法律は、航空法以外にも存在します。
それが「小型無人機等飛行禁止法」です。
小型無人機等飛行禁止法とは、国の重要施設等の周辺地域でのドローン等の飛行を禁止する法律です。
航空法とは異なり、100g未満の機体も対象となるので、すべてのドローン、ヘリコプター、飛行船などが禁止の対象となります。
飛行の禁止されるエリアは対象施設(レッドゾーン)と周囲300m(イエローゾーン)です。
小型無人機等飛行禁止法で禁止されるエリアで飛行を行う場合は航空法上の許可とは別で申請を行う必要があります。
小型無人機等飛行禁止法の飛行禁止エリアとは
下の地図は小型無人機等飛行禁止法で禁止されている場所を地図上にまとめたものです。
小型無人機等飛行禁止法で規制されている施設の詳細一覧は以下URLから確認することができます。
https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/shitei.html
この法律ができた当初はそれほど指定施設は多くはなかったのですが、改正に改正を重ね、いまでは300以上の施設が指定されています。
特に東京都と沖縄県での飛行には注意が必要です。
周囲300m(イエローゾーン)に注意
対象施設は国の政府施設、防衛施設、空港などのためその上空(レッドゾーン)で飛行することはほとんどないと思います。
しかし、その周囲300m(イエローゾーン)は、一般のドローンユーザーも飛行する可能性がありますので、注意が必要です。
下の画像は対象施設「那覇港湾地区」とその周囲300mを図示したものです。
赤枠内が対象施設(レッドゾーン)で黄色枠内が周囲300m(イエローゾーン)です。
見ての通り、イエローゾーンには住宅地も含まれており、学校や神社も存在することがわかります。
飛行を行う場合は手続きが必要
小型無人機等飛行禁止法で禁止されるエリアで飛行を行う場合は、以下の手順で申請をします。
小型無人機等飛行禁止法に基づく申請方法
- 管理者から同意書をもらう、または、国からの飛行委託書を用意する
- 飛行の48時間前まで「警察署」に通報書を提出
管理者の承諾を得る方法
航空法、小型無人機等飛行禁止法の規制をクリアしたら、最後に管理者から飛行の承諾を得ます。
しかし、この管理者から承諾を得る方法は、手続きとして定まっていないケースが多く、千差万別なのが現状です。
山で飛行する場合
山は所有者で、大きく以下の3つに分類できます。
日本の山林の所有割合は以下のとおりです。
区分 | 調べ方 | 申請方法 |
---|---|---|
国有林・・・国が所有する山林 | ・国土情報ウェブマッピングシステム(国有林野表示版) ※マップの緑色の部分をクリックすると管理者が表示されます。 | 森林管理署へ入林届を提出 |
公有林・・・都道府県、市町村が所有する山林 | 「○○県 公有林」等で検索、または山林のある役場に問合せ | 各自治体によるため役場に問合せ |
私有林・・・個人、企業が所有する山林 | 周辺住民への聞き込み | 所有者の求める方法に従う |
名称のある山の場合は、「○○山 ドローン」などでGoogle検索をすると、手続き方法を見つけることができる可能性があります。
私有林の場合は、周辺に住まわれている方への聞き込み等が必要になるケースもあり、正直、飛行はかなり困難です。
公園で飛行する場合
公園は管理者により大きく2つに分けることができます。
区分 | 調べ方 | 申請方法 |
---|---|---|
自然公園・・・国立公園、国定公園、都道府県立自然公園の総称 | ・国土情報ウェブマッピングシステム(自然公園表示版) 緑枠をクリックすると自然公園名が表示されるので、Google検索で事務所を探します。 | 国立公園管理官事務所・自然保護官事務所に事前連絡 ※許可申請や届出書類は現状不要 |
都市公園・・・一般的な公園 | ・国土情報ウェブマッピングシステム(都市公園表示版) 黒点をクリックすると管理している市町村等が表示されます。 | 各自治体によるため役場に問合せ |
自然公園でのドローン飛行については、それほど厳しい規制はありません。
しかしながら一般的な公園「都市公園」については、原則、条例や管理者権限で飛行が禁止されており、場合によって、届出(+撮影料)で例外的には認めれております。
条例の一覧については、国交省HPにまとめられておりますので、参考にしてください。
ドローン関連の条例一覧:https://www.mlit.go.jp/common/001370402.pdf
道路で飛行する場合
無人航空機に係る道路使用許可の取扱いについて(通達)にて道路交通法における道路ドローン飛行の取扱が統一されました。
道路での飛行については、道路上を飛行するだけか、道路上で着陸・作業をするかで手続きが変わります。
区分 | 申請方法 |
---|---|
道路上を飛行させる場合 | 道路使用許可は不要だが、事前に管轄の警察に連絡することをおすすめ。 ※多くの場合で「あ、そうですか、気を付けてください」と言われるだけだが、後々のトラブルを回避できるため。 |
道路上で着陸・操縦等をする場合 | 管轄の警察に事前相談し、状況を総合的に判断して、必要となった場合に道路使用許可申請をする。 |
管轄の警察署は国土情報ウェブマッピングシステム(警察管轄表示版)で確認できます。
川で飛行する場合
河川法ではドローンの飛行を直接的に禁止しているわけではありません。
しかしながら、管理者権限により飛行が制限されている可能性があります。
「○○川 管理者」「○○川 ドローン」と調べると各管理者の方針を調べることができます。
海岸で飛行する場合
海岸法が適用される「海岸保全区域」、「海水浴場」、「それ以外の海岸」に分類できます。
区分 | 調べ方 | 申請方法 |
---|---|---|
海岸保全区域、区域内施設 | ・海岸保全施設データ 国土情報ウェブマッピングシステムに登録されていないためQGISを利用して確認する必要があり。 ※管理者は「○○県 海岸保全区域」と調べると出てくるケースが多いです。 | 管理者と協議の上、必要があれば許可申請。 |
海水浴場 | ・海洋状況表示システム ※「海域利用→レジャー施設」をクリック。ピンをクリックすると管理者名が表示されます。 ※海岸保全区域と重複しているケースがあります。 | 海水浴場の管理者が求める方法 |
それ以外の海岸 | その場所の都道府県、市町村役場に問合せ | 管理者によるが、事前の報告だけで済むケースが多い |
港、航路で飛行する場合
港や航路で飛行する場合は、許可は必要ありませんが、管理者からの承諾は必要です。
港則法が適用される港や海上交通安全法が適用される海域においても、港則法又は海上交通安全法に基づく許可又は届出は必要ないという回答が出ています。※管理者からの承諾は必要です。
ただし、ドローンの飛行に関連して、海上に船を配置したり、工作物を設置するなど、船舶交通に影響を及ぼすおそれがある場合は、港則法又は海上交通安全法の許可又は届出を行う必要があります。
ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインVer.3.0 P35 港則法及び海上交通安全法より
港や航路の管理者は海洋状況表示システムで調べることできます。
※「海事→港湾」をクリックして、対象の港をクリックすると、管理者が表示されます。
※「海事→航路」をクリックし、対象の航路をクリックすると管理者が表示されます。
それ以外の海上で飛行する場合
海岸、港、航路以外の海上では基本的に許可は不要ですが、海上保安庁への事前連絡をおすすめします。
海上保安庁の管轄は以下のURLから確認できます。
https://www.kaiho.mlit.go.jp/syoukai/kanku/index.htm
※海上保安庁からも事前連絡をお願いされております。
私有地で飛行する場合
住宅地、お寺、観光地など、私有地で飛行する場合は、その場所の所有者または管理者から飛行の承諾を得る必要があります。
特に様式はありませんが、後々のトラブルを避けるため、飛行する旨の書類を渡しておくとよいでしょう。
【許可不可】絶対に守るべき飛行方法
2019年9月18日の航空法改正により飛行ルールが追加されました。
前述の「夜間飛行、目視外飛行、30m接近飛行、イベント飛行、危険物輸送、物件投下」は国土交通大臣の承認を受けることで飛行が可能となりますが、
以下の4つの飛行は、許可承認という概念がありませんので、絶対に守らなければいけません。
アルコール又は薬物等の影響下での飛行は禁止 <遵守事項>
車での飲酒運転はもちろんダメですが、ドローンでも飲酒運転は禁止であることが航空法に明記されています。
「アルコール」とは、アルコール飲料やアルコールを含む食べ物を指します。
「薬物」とは、麻薬や覚醒剤等の規制薬物に限らず、医薬品も含まれます。
医薬品としては、睡眠作用のある頭痛薬や視覚に影響のある点眼薬などが挙げられます。
無人航空機の正常な飛行に影響を与えるものを摂取したあとの飛行はやめましょう。
またアルコールの体内濃度については、「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」という資料に以下のように記載があります。
アルコールによる身体への影響は、個人の体質やその日の体調により異なるため、体内に保有するアルコールが微量であっても無人航空機の正常な飛行に影響を与えるおそれがある。このため、体内に保有するアルコール濃度の程度にかかわらず体内にアルコールを保有する状態では無人航空機の飛行を行わないこと。
無人航空機に係る規制の運用における解釈について
つまり、微量であっても一滴でもお酒を飲んだら、飛行はやめましょう。
飛行前確認を行わない飛行は禁止 <遵守事項>
この文面だけでは、あいまいなので、少し詳細を見てみましょう。
まず趣旨は、「飛行に必要な準備が整っていることを確認した後において飛行させることにより、故障等による落下を防止する」ことです。
そして確認しなければならない事項は航空法施行規則第236条の77に定められています。
飛行前に確認すべきこととその具体的な例は以下の通りです
(1)当該無人航空機の状況について外部点検及び作動点検を行うこと
具体的な例:
- 各機器(バッテリー、プロペラ、カメラ等)が確実に取り付けられていることの確認
- 機体(プロペラ、フレーム等)に損傷や故障がないことの確認
- 通信系統、推進系統、電源系統及び自動制御系統が正常に作動することの確認
(2)当該無人航空機を飛行させる空域及びその周囲の状況を確認すること
具体的な例:
- 飛行経路に航空機や他の無人航空機が飛行していないことの確認
- 飛行経路下に第三者がいないことの確認
(3)当該飛行に必要な気象情報を確認すること
具体的な例:
- 風速が運用限界の範囲内であることの確認
- 気温が運用限界の範囲内であることの確認
- 降雨量が運用限界の範囲内であることの確認
- 十分な視程が確保されていることの確認
ここでいう風速とは、離着陸場所の地上風と飛行経路上の各高度帯における風向風速です。
各高度帯における風向風速については、Windy.comというサイトがおすすめです。
右サイドの飛行機アイコンをクリックすると、各高度帯における風向風速が確認できます。
(4)燃料の搭載量又はバッテリーの残量を確認すること
具体的な例:
十分な燃料又はバッテリーを有していることの確認
機体と周辺状況をしっかり確認しましょうという内容です。
衝突予防をしない飛行は禁止 <遵守事項>
飛行機、ヘリコプター、他のドローンとの衝突を予防しない飛行は禁止されています。
具体的な予防方法は航空法施行規則第236条の78に定められています。
衝突予防の具体策
- 無人航空機の飛行経路上及びその周辺の空域において飛行中の「航空機」を確認し、衝突のおそれがあると判断される場合は、当該無人航空機を地上に降下させることその他適当な方法を講じること。
つまり飛行機やヘリコプターを見つけた場合は、ドローンを着陸させましょうということです。
- 無人航空機の飛行経路上及びその周辺の空域において飛行中の他の「無人航空機」を確認したときは、他の無人航空機との間に安全な間隔を確保して飛行させること、又は衝突のおそれがあると判断される場合は、無人航空機を地上に降下させることその他適当な方法を講じることとする。
つまり、他のドローン等を見つけた場合は、まずは安全な間隔を確保して飛行させましょう。しかしそれができず、衝突の可能性がある場合は、ドローンを着陸させましょうということです。
ここでいう「その他適当な方法を講じること」とは、衝突する可能性のある方向とは「別の方向に無人航空機を飛行させる」「空中で停止すること」も含まれ得えます。
状況に応じて判断をしましょう。
他人に迷惑を及ぼすような飛行は禁止 <遵守事項>
不必要に騒音を発したり、急降下させたりする飛行は、周囲に不快感を与えるだけでなく、航空機の飛行の安全や人や物件の安全を損なう可能性が高いです。
「他人に迷惑を及ぼすような方法」とは、人に向かって無人航空機を急接近させること等が挙げられます。
まとめ
いかがでしょうか。
意外と「許可・承認が必要だった」という方が多いと思います。
現状、ドローンで空撮などを行う場合は、ほとんどのケースで必要になるかと思います。
ドローンの飛行許可承認が必要な場合は、国土交通省に申請書を提出して飛行許可承認を取得することとなります。
本サイトでは現役行政書士である筆者が、過去の申請経験をもとに「自分で申請する方法」についてまとめさせていただきましたので、ぜひご活用ください!
許可を取得しても注意が必要!
ドローンの許可承認を取得した後も、立入管理措置、飛行マニュアルによる制限、小型無人機等飛行禁止法、条例、民法など意外と多くの注意事項が存在します。
このような事項を知らなかったことにより「法令違反をしてしまう可能性」もありますが、逆に全貌がわからず「飛行を躊躇してしまう」方も多いかと思います。
そのようなことがないよう当社では、何ができて、何ができないのかをしっかり伝え、法律の範囲内で最大限ドローンを活用できるよう申請代行を行なっています。
また許可取得後の不明点も解決できるように、包括申請をご依頼いただきましたお客様には無償付帯行政書士顧問サービスが付いてきます!
お客様のDIPSアカウントから申請いたしますので、1年目はしっかりとした知識・申請で許可を取得し、2年目以降はご自分で更新される方もいらっしゃいます!
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執筆者:
行政書士 中島北斗
ドローンの規制(改正航空法)が始まった2015年当初からドローン申請業務を行っている行政書士が、ドローン法令の遷移を生で感じていたからこそわかる、リアルで正確性な情報を発信いたします。
ドローン許可取得実績は9,000件、相談実績は11,000件、また50校を超えるドローンスクールの顧問をしています。
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