令和8年4月1日に、「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」という資料が改正されました。
ざっくりいうと、一定の要件を満たすことで、これまで必要だった農薬散布に関する一部の承認申請が不要になるという規制緩和です。

行政書士 中島北斗
この記事では、「今回の改正で何が変わったのか」「なぜ承認不要になるのか」「承認不要となる条件」について行政書士が詳しく解説していきます。
解説資料の新旧対照表
令和8年4月1日に、「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」が改正されました。
まずは、この解説資料の新旧対照表を見てみましょう。

大きく変わったポイントは、農薬散布に関する項目が追加されたことです。
追加された内容を簡単にいうと、農薬等の空中散布に係る飛行について、一定の要件を満たす場合には一部の承認申請が不要になるというものです。
承認が不要となる飛行
▼農業用ドローンに必要な許可については、以下の記事にまとめています。
許可・承認が不要になるのはなぜ?
ドローンで特定飛行を行う場合、原則として許可・承認が必要です。
一方で、技能証明と機体認証を受けている場合や、係留飛行を行う場合など、一定の条件を満たせば、許可・承認なしで飛行できるケースもあります。
では、今回の法改正では、どのような仕組みで農薬散布ドローンの一部飛行が承認不要になったのかを見ていきましょう。
農薬散布は一部承認申請が不要になる
今回の改正は、係留飛行と同じ法律上の仕組みを使って、一定の要件を満たす飛行を承認不要にしています。
前三項の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合には、適用しない。
航空法第132条の86第5項第1号
一 係留することにより無人航空機の飛行の範囲を制限した上で行う飛行その他の航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を確保することができるものとして国土交通省令で定める方法による飛行を行う場合
この条文では、係留飛行そのものだけでなく、「その他の…国土交通省令で定める方法による飛行」 という形で、係留飛行以外にも安全を確保できる飛行方法を省令で追加できる構造になっています。
ただし、これまで航空法施行規則には、実質的に係留飛行に関する規定しかありませんでした。
今回の改正では、この国土交通省令(航空法施行規則)が見直され、農薬等の空中散布で行う危険物輸送や物件投下などについても、一定の条件を満たせば承認不要となるよう整理されたのです。
国土交通省令(航空法施行規則)の改正箇所
では、実際にどの条文が改正されたのかを見てみましょう。
今回のポイントとなるのは、航空法施行規則第236条の82第1項第2号です。
第1号は、係留飛行に関する規定です。
そして第2号が、今回新たに追加された項目です。ここには、農薬散布ドローンなどの飛行について承認不要とするための条件が、イからルまで細かく定められています。
(法第百三十二条の八十六第二項から第四項までの規定を適用しない無人航空機の飛行の方法)
航空法施行規則第236条の82第1項第2号
第二百三十六条の八十二 法第百三十二条の八十六第五項第一号の国土交通省令で定める方法は、次のいずれかに該当する方法とする。
一 法第百三十二条の八十六第二項第四号及び第五号に掲げる方法であつて、第二百三十六条の七十六第二号から第四号までのいずれにも該当するものであること。(係留飛行について)
二 法第百三十二条の八十六第二項第四号に掲げる方法であつて、次のいずれにも該当するものであること。(今回追加された項目)
イ 飛行の方法に応じ必要な機能及び性能を有するものとして国土交通大臣が定める基準に適合する無人航空機を飛行させること。
ロ 法第百三十二条の八十六第二項第一号から第三号までに掲げる方法によらずに飛行させる場合にあつては、総重量二十五キログラム未満の無人航空機を飛行させること。
ハ 無人航空機を飛行させる者が、当該無人航空機を安全に飛行させるために必要な知識及び能力として飛行の方法に応じ国土交通大臣が定めるものを有していること。
ニ 無人航空機を飛行させる者その他の関係者が所有又は管理する土地であつて、現に農業の用に供されている農地又は現に林業の用に供されている森林(これらに隣接し、かつ、これらと一体となつて農林業の用に供されている農業用道路その他の土地を含む。)の区域内において、地表若しくは水面又は農作物(樹木及び農林産物を含む。)の上端から四メートル以下の高さの空域において飛行させること。
ホ 法第百三十二条の八十六第二項第一号又は第二号に掲げる方法によらずに飛行させる場合にあつては、自動操縦により飛行させること。
ヘ 法第百三十二条の八十六第二項第五号に掲げる方法によらずに飛行させる場合にあつては、農薬その他の人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通大臣が定めるものを輸送するものであること。
ト 無人航空機の飛行の範囲を制限する機能及び故障その他の不具合が生じた場合に飛行の安全を確保する機能(これらに類するものとして国土交通大臣が定める機能を含む。)を使用して飛行させること。
チ ホからトまでに掲げるもののほか、飛行の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が定める方法により飛行させること。
リ 第二百三十六条の七十五第一項の措置を講じた上で飛行させること。
ヌ 無人航空機の飛行経路下に地上又は水上の物件が存しない場合に飛行させること。
ル 補助者の配置その他の無人航空機の飛行経路下において無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者以外の者の立入りを管理する措置を講じて飛行させること。
承認が不要となる要件とは
前述のとおり、承認が不要となるための要件として、イからルまでの11項目が定められています。
ここからは、それぞれの要件を順番に見ていきましょう。
①機体の要件
まずは、1つ目の条件である「イ」です。
ここでは、使用する機体の要件が定められています。
イ 飛行の方法に応じ必要な機能及び性能を有するものとして国土交通大臣が定める基準に適合する無人航空機を飛行させること。
この「国土交通大臣が定める基準」については、別の資料で詳細が示されています。
具体的には、国土交通省ホームページに掲載されている「航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により飛行の方法に係る承認が不要な飛行の取扱い」という資料です。
以降の要件についても、詳細はこの資料に記載されています。
この資料を要約すると、使用する機体は、第一種機体認証または第二種機体認証を受けた機体であり、かつ、飛行の方法に応じた内容が審査の中で確認されている必要があると整理できます。
たとえば、危険物輸送を行う場合は、危険物の輸送に適した装備が備えられていることなどについて、あらかじめ審査で確認されている必要があります。
そのため、機体認証を受けた機体であれば、どの機体でも承認が不要になるわけではありません。
実際に飛行する前に、使用する機体の型式認証の内容を必ず確認しておきましょう。

型式認証を取得している無人航空機の一覧は、以下の資料で確認できます。
型式認証を取得している無人航空機一覧:https://www.mlit.go.jp/koku/content/001989565.pdf
②機体の総重量の要件
次に、「ロ」です。
ここでは、機体の総重量に関する要件が定められています。
ロ 法第百三十二条の八十六第二項第一号から第三号までに掲げる方法によらずに飛行させる場合にあつては、総重量二十五キログラム未満の無人航空機を飛行させること。
前述の資料をもとに整理すると、夜間飛行・目視外飛行・第三者から30m以内の飛行を行う場合は、総重量25kg未満の機体で飛行させる必要があります。
つまり、総重量25kg以上の機体では、これら3つの特定飛行を承認なしで行うことはできません。
③操縦者に係る要件
次に、「ハ」です。ここでは、操縦者に係る要件が記載されています。
ハ 無人航空機を飛行させる者が、当該無人航空機を安全に飛行させるために必要な知識及び能力として飛行の方法に応じ国土交通大臣が定めるものを有していること。
前述の資料をもとに整理すると、いずれの飛行においても、技能証明を有していることに加え、25kg以上の機体を飛行させる場合には重量の限定変更を受けていること、さらに継続的な訓練により操縦技量を維持していることなどが求められます。
訓練の内容についても、資料に詳細が記載されています。

また、これらの共通要件に加え、飛行の方法に応じて追加で求められる要件についても定められています。

④飛行場所および飛行高度に係る要件
次に、「ニ」です。ここでは、飛行場所と飛行高度に係る要件が記載されています。
ニ 無人航空機を飛行させる者その他の関係者が所有又は管理する土地であつて、現に農業の用に供されている農地又は現に林業の用に供されている森林(これらに隣接し、かつ、これらと一体となつて農林業の用に供されている農業用道路その他の土地を含む。)の区域内において、地表若しくは水面又は農作物(樹木及び農林産物を含む。)の上端から四メートル以下の高さの空域において飛行させること。
この要件を整理すると、場所の要件と高度の要件は次のとおりです。
まず場所については、操縦者その他の関係者が所有または管理する土地であり、現に農業の用に供されている農地、または現に林業の用に供されている森林の区域内であることが求められます。
また、高度については、地表・水面・農作物の上端から4m以下の空域で飛行させることが要件とされています。
たとえば、作物の高さが1mであれば、その上端から4m以下の範囲で飛行させることが必要です。

「操縦者その他の関係者」の考え方については、資料の中で直接関与者・間接関与者・作業の発注者に分けて説明されています。
特に重要なのは、作業の発注者も「関係者」に含まれると明記されている点です。

「直接関与者」と「間接関与者」の考え方については、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
また、「これらに隣接し、かつ、これらと一体となつて農林業の用に供されている農業用道路その他の土地を含む」という部分についても、資料に詳細な説明があります。

⑤自動操縦に係る要件
次に、「ホ」です。ここでは、自動操縦に係る要件が記載されています。
ホ 法第百三十二条の八十六第二項第一号又は第二号に掲げる方法によらずに飛行させる場合にあつては、自動操縦により飛行させること。
この要件を整理すると、夜間飛行または目視外飛行を行う場合には、自動操縦により飛行させる必要があるということです。
⑥輸送物件に係る要件
次に、「ヘ」です。ここでは、輸送物件に係る要件が記載されています。
ヘ 法第百三十二条の八十六第二項第五号に掲げる方法によらずに飛行させる場合にあつては、農薬その他の人に危害を与え、又は他の物件を損傷するおそれがある物件で国土交通大臣が定めるものを輸送するものであること。
ここでは、危険物輸送を行う場合に、承認不要の対象となる物件について示されています。

⑦飛行範囲の制限に関する機能に係る要件
次に、「ト」です。
ここでは、飛行範囲を制限する機能と、故障や不具合が生じた場合に飛行の安全を確保する機能に関する要件が定められています。
ト 無人航空機の飛行の範囲を制限する機能及び故障その他の不具合が生じた場合に飛行の安全を確保する機能(これらに類するものとして国土交通大臣が定める機能を含む。)を使用して飛行させること。
この要件では、飛行範囲を制限する機能と、フェールセーフ機能を使用して飛行させることが求められています。
飛行範囲を制限する機能の例としては、ジオフェンス機能。
また、フェールセーフ機能としては、リターントゥホーム、ホバリング、自動着陸など、不具合が発生した際に安全を確保するための機能を使用することが求められています。
さらに、「これらに類するものとして国土交通大臣が定める機能」として、障害物検知機能、自動操縦機能、強制落下機能(キルスイッチ)なども例示されています。
⑧その他の飛行の方法に係る要件
次に、「チ」です。
チ ホからトまでに掲げるもののほか、飛行の安全を確保するために必要なものとして国土交通大臣が定める方法により飛行させること。
ここでいう「国土交通大臣が定める方法」の詳細については、前述した資料に記載されています。
内容を大まかに整理すると、飛行マニュアルに記載されている運用上のルールがこれにあたります。
⑨飛行マニュアル作成および順守
次に、「リ」です。
リ 第二百三十六条の七十五第一項の措置を講じた上で飛行させること。
この要件は、飛行マニュアルを作成し、その内容を遵守して飛行することを求めるものです。
これは、技能証明と機体認証により許可・承認なしで飛行する場合の運用ルールと同様です。
第二百三十六条の七十五第一項の措置については、詳細が前述した資料に記載されています。

なお、この内容については航空局標準マニュアルが用意される想定であり、原則としてそれを使用することになると考えられます。
ただし、記事執筆時点では公開を確認できませんでした。
⑩飛行経路に係る要件
次に、「ヌ」です。
ヌ 無人航空機の飛行経路下に地上又は水上の物件が存しない場合に飛行させること。
この要件を整理すると、無人航空機の飛行経路下に、地上または水上の第三者の物件が存在しない状態で飛行させることが条件となっています。
⑪立入管理措置に係る要件
最後に、「ル」です。
ル 補助者の配置その他の無人航空機の飛行経路下において無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者以外の者の立入りを管理する措置を講じて飛行させること。
この要件では、第三者の立入りを管理する措置を講じたうえで飛行させることが求められています。
飛行の方法に応じた立入管理措置の詳細については、前述した資料に記載されています。

立入管理措置は、ドローンを飛行させるうえで重要な要素ですが、内容がやや複雑です。
詳しくは、こちらの記事で解説していますので、あわせて参考にしてください。
また、農薬散布における立入管理措置は少し特殊で、目視内飛行を補助者なしで行う場合には、通常の立入管理措置とは考え方が異なります。
この点が気になる方は、資料もあわせて確認しておくとよいでしょう。
資料「航空法施行規則第236条の82第1項第2号の規定により飛行の方法に係る承認が不要な飛行の取扱い」
https://www.mlit.go.jp/common/001990796.pdf
飛行計画の通報・飛行日誌の作成義務はある
以上の要件を満たし、承認なしで飛行させる場合であっても、係留飛行と同様に特定飛行に該当します。
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まとめ:農薬散布ドローンの規制緩和は進んだが、実務上のハードルは残る
以上が、農薬散布に関する規制緩和の内容です。
現時点では、農薬散布に対応した型式認証機がまだ多くないため、この制度を使って承認なしで飛行するのは、実務上まだハードルが高いといえます。
ただ、今後こうした機体が増えていけば、より安全かつ円滑に運用できる環境が整っていくと考えられます。
一方で、農薬散布は事故も発生しているため、規制緩和の内容だけでなく、安全管理にも十分注意が必要です。
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執筆者:
行政書士 中島北斗
ドローンの規制(改正航空法)が始まった2015年当初からドローン申請業務を行っている行政書士が、ドローン法令の遷移を生で感じていたからこそわかる、リアルで正確性な情報を発信いたします。
ドローン許可取得実績は15,000件、相談実績は20,000件、また100校を超えるドローンスクールの顧問をしています。
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