登録講習機関を設立するための国交省の手続きは「登録申請→登録免許税の支払い→事務規程提出・受理」という流れです。
この記事では、その後、講習開始までにやるべきこと、講習開始後にやるべきことを解説します。

行政書士 中島北斗
この記事では、国交省に事務規程が受理された後、登録講習機関がやるべきことをまとめています。
この記事を読むと、登録講習機関の日常業務、保存資料、作成すべき法定文書、内部研修などを知ることができます!
内部研修の実施
登録講習機関は①管理者に対して管理者研修、②講師に対して講師研修を実施し、③修了審査員には講師研修に加えて、修了審査員研修を受講させる必要があります。
管理者研修の実施
無人航空機の登録講習機関及び登録更新講習機関に関する省令(以下、省令) 第6条第1項第4号より、登録講習機関は管理者に管理者研修を実施する必要があります。
時間数の指定はありませんが、実施すべき項目は告示にまとめられており、詳細は事務規程の「登録講習機関管理者に対する研修指導要領」にて届け出る形となります。
管理者研修の講師役は、登録講習機関が適切と認める者で構いません。
管理者研修の実施後は、国交省に報告する必要はありませんが、航空局「登録講習機関の事務手続きに関するガイドライン」より実施記録は作成する必要があります。
このときには実施日、講習内容、講師等を記載した修了証明書を発行することをおすすめしております。
※航空局FAQでは副管理者は研修任意となっているのですが、監査通達では必要となっており、監査現場で指摘されてしまうため、副管理者についても管理者研修の実施をしましょう。
講師研修の実施
省令第6条第1項第4号より、登録講習機関は講師に講師研修を実施する必要があります。
時間数や実施すべき項目は告示にまとめられており、詳細は事務規程の「登録講習機関講師に対する研修指導要領」にて届け出る形となります。
講師研修の講師役は、管理者が適切と認める者で構いません。
講師研修の実施後は、国交省に報告する必要はありませんが、航空局「登録講習機関の事務手続きに関するガイドライン」より実施記録は作成する必要があります。
このときには実施日、講習内容、講師等を記載した修了証明書を発行することをおすすめしております。
修了審査員研修の実施
登録講習機関の教育の内容の基準等を定める告示(以下、告示) 第2条第3項第1号より、修了審査員は日本海事協会の修了審査員研修を受ける必要があります。
日本海事協会が行う修了審査員研修はeラーニングとなりますので、登録講習機関から日本海事協会に受講申請を行い、アカウントを発行してもらいます。
また同項第2号より修了審査員研修修了証明書を保持している者に限り、修了審査員として選任できるため、発行前に修了審査を行うことはできません。
また修了審査員は講師の中から選出するため、講師研修は必須です。

立ち上げ準備
登録講習機関として受講生を受け入れる前には、以下のような文書を用意しておくことをおすすめします。
特にトラブル防止のため、受講規約の作成はマストで行いましょう。
講習や修了審査のシミュレーションも行っておくと安心です。
入学から卒業までの流れ
登録講習機関は、航空法第132条の50に基づき、実質的に国の試験業務を一部代行できる重要な役割を担っています。
そのため、法令に則った厳密な運営が強く求められます。
入学から卒業までの流れの中でも、作成すべき帳簿や保存資料が法定されています。
詳しく解説しますので参考にいただけますと幸いです。
STEP1.入学受付
まずは受講希望者の入学受付をします。
入学申請書は事務規程で提出しておりますので、その様式を使う必要があります。
※入学申請書を変更する場合は事務規程の変更が必要です。
帳簿作成
省令第12条第1項により、登録講習機関は入学申請の受理に関する帳簿を作成する必要があります。
いつ、だれから、どんな申し込みがあったかをエクセル等でまとめます。
保存資料
省令第12条第2項より、入学申請書やその添付資料(本人確認資料、経験者資料、学科免除資料)は講習を終了した日から3年間、保存しなければいけません。
事務規程で保存しないとしていても、省令が優先されるため、認められません。 ※航空局確認済み

STEP2.請求・領収
入学申請書を受理したら、事務規程の講習事務手数料に従って、講習費用の請求を行います。
※後払いの場合次のステップに進みます。請求のタイミングでSTEP2をご確認ください。
帳簿作成
省令第12条第1項第1号により「講習料金の収納に関する帳簿」を作成し保存する必要があります。
つまり、誰から、いつ、何のコースで、いくら貰ったかの記録が必要となります。
保存資料
監査時には「講習料金の収納に関する帳簿」の証憑として「請求書」「収納記録(通帳コピー、振込明細、領収証等)」の提出が求められます。
これらも保存しておきましょう。
事務規程の講習事務手数料と異なる請求をする場合
航空法第132条の74より、登録講習機関は事務規程に無人航空機講習に関する料金を定め、国交省に届け出る必要があります。
届け出と異なる費用請求は原則できませんので、割引を行う場合は、対象者と割引金額を事務規程の講習事務手数料に記載する必要があります。
つまり、関係者割引や団体割引を行う場合は事務規程の変更を行う必要があります。
ただし、航空局FAQより一時的な値引きは、事務規程に記載がなくても実施可能ですが、
監査時にはその証跡として、キャンペーンのチラシやDMなどの提出が必要となりますので、実施記録は必要となります。
※一時的なキャンペーンが繰り返し行われる場合は、事務規程への記載が必要です。
STEP3.講習日の案内
受講生と学科・実地講習日を調整し、案内を送ります。
監査時には、受講生との調整の証跡として、メールのスクリーンショットや案内スケジュール表を提出する必要がありますので、保存しておくことをおすすめします。
特定飛行を行う場合は許可承認申請も忘れずに
航空法第132条の85,86に基づき、屋外講習で、人口集中地区での飛行、30m離せない飛行、夜間飛行、目視外飛行を実施する際には、受講生と講師の双方が飛行許可承認書を取得する必要があります。
監査時にはこの許可承認書の提出も求められますので、保存しておきましょう。
受講生は総飛行時間が10時間未満、夜間目視外の飛行経験がない場合があります。
飛行経験が少ない場合の許可取得は少し複雑になりますので初回だけご依頼いただき、次回以降はご自身で申請いただくことも可能です。お気軽にお問い合わせください。

STEP4.学科講習・実地講習
いよいよ講習の開始です。
学科講習
学科講習は告示上、対面・Zoom・eラーニングが想定されています。
告示 別表第一にて学科講習は、18時間(一等初学者)、9時間(一等経験者)、10時間(二等初学者)、4時間(二等経験者)実施する必要があります。
また①心得、②規則、③システム、④運航体制、⑤リスク管理の各科目にも必須時間が定められています。
事務規程で提出した時間割に従って、学科講習を行いましょう。
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実地講習
告示で実地講習は、「基本、夜間、目視外、25kg」×「一等初学者、一等経験者、二等初学者、二等経験者」の組み合わせ分の時間数が定められています。
またそれぞれ必修科目も異なりますそれぞれ必修科目も異なります。
帳簿作成
通達「登録講習機関の登録等に関する取扱要領」より、いつ・誰が・誰に・何を・何時間教えた等を記載した無人航空機講習の記録簿(以降:講習記録簿)の作成が必要となります。
講習記録簿は事務規程で提出しているはずですので、講習を実施したら、都度講習記録簿に内容を記載しましょう。

保存資料
作成した講習記録簿は保存が必要です。
また対面以外の講習(Zoomやeラーニングの場合)は、告示別表第三より、効果測定のため学科修了テストを実施し、その合格を以って学科修了とする必要があります。
監査時には「学科修了確認テストの結果」の提出が必要ですので、保存しておきましょう。
STEP5.修了審査
学科講習、実地講習が完了したら、修了審査を行います。
保存資料
STEP6.修了要件の確認
いままでの講習記録簿や修了審査の採点解答用紙をもとに、修了要件を満たしているか確認します。
STEP7.修了証明書の発行
無事、修了要件を満たしている場合、修了証明書を発行します。
修了証明書の様式は航空局「登録講習機関の事務手続きに関するガイドライン」にあります。


帳簿作成
省令第12条第1項第3号により「無人航空機講習の修了証明書の交付及び再交付に関する事項」に関する帳簿を作成し保存する必要があります。
これを根拠に事務規程では「修了証明書発行台帳」の作成が求められています。
事務規程にて修了証明書発行台帳の様式を提出しているはずですので、そちらを利用して記録しましょう。
保存資料
監査時には発行した修了証明書の写しの提出が必要なので、保存しておきましょう。
STEP8.DIPSにCSVをアップロード
事務規程受理後、航空局から登録講習機関専用のDIPSのログインURL、ログインID、パスワードがメールにて届きます。
当該DIPSにて修了者情報をCSVでアップロードします。
CSVの作成方法はログイン後の「各種操作マニュアルはこちら」にて確認できます。
保存資料
監査時には作成したCSVの提出も求められますので、保存しておきましょう。
以上が入学から卒業までの一連の流れです。
定期業務
【1か月に1回】実施状況報告書の作成
省令第12条第1項第4号により登録講習機関は「無人航空機講習の実施状況に関する事項」に関する帳簿を作成し保存する必要があります。
様式や項目は指定されていませんが、FAQより日時単位でどの様な講習を、何人の受講者に対して、どの講師が実施したかが分かるような記載が求められます。
受講生毎に管理する講習記録簿とは根拠法令が異なりますので注意が必要です。
実施状況報告書は毎年、事務規程で定めた日付までに作成する必要がありますが、講習記録簿を見ながら作成する形になるので、月1回ペースでこまめに記録することをおすすめします。
様式は事務規程で提出しているはずですのでそちらを使用しましょう。

【3か月に1回】四半期実施計画の作成
省令第8条第1項第4号及び通達「登録講習機関の登録等に関する取扱要領」より、登録講習機関は四半期毎に実施計画書を作成する必要があります。
第1四半期は事務規程届出時に提出が必要ですが、第2四半期以降は提出は不要なため、作成を忘れてしまいやすいです。
通達より四半期実施計画には、少なくとも、講習の日程・講習会場・講習を受ける者の定員・同時に講習を受ける者の人数・受講申し込みの受付方法と受付時間の記載が必要です。
様式は事務規程で提出しているはずですのでそちらを使用しましょう。
【1年に1回】管理者による講習定期確認
省令第6条第1項第6号より、登録講習機関事務所の管理者は講習が適切に行われていることを定期的に確認する必要があります。
その頻度と確認事項は通達「登録講習機関の登録等に関する取扱要領13(7)」に定められています。
【1年に1回】外部監査の受検/航空局へ監査報告
省令第6条第1項第7号より、毎事業年度、外部団体による監査を受検する必要があります。
監査の受検は法令で定められており、任意ではありませんので注意しましょう。
また省令第6条第1項第8号により、外部監査の受検結果(監査報告書)を、監査が終了した日から1か月以内に国交省に提出する必要があります。
不定期業務
その他登録講習機関には以下のような不定期業務があります。
財務諸表閲覧対応
航空法第132条の76より、登録講習機関は毎事業年度経過後3か月以内に、当該事業年度の財務諸表等を作成し、5年間事務所に備えておく必要があります。
また同条より、受講希望者等の求めに応じて、閲覧させる必要がありますので請求申請書と対応マニュアルの作成をおすすめします。
修了証明書の再交付
修了証明書交付の日から起算して1年を経過しない者に限り、以下の事項が生じた場合は修了証明書の再発行が可能です。
① 氏名を変更したとき
② 修了証明書の滅失又は毀損
このときの再交付のためは、修了証明書再交付申請書を書いてもらう必要がありますので、こちらのひな型も作成しておくことをおすすめします。
一時的なキャンペーンの実施記録
登録講習機関は、事務規程にて届け出た講習事務手数料に記載のない金額で請求することはできません。
ただし、一時的なキャンペーンによる割引については、事務規程に記載がなくても実施可能です。
監査時にはその証跡として、キャンペーンのチラシやDMなどの提出が必要となりますので、実施記録は必要となります。
チラシやDMなどがないケースでは、「一時的なキャンペーンの実施要領」などを作成することをおすすめします。
事務手続き
講習事務手数料、時間割、空域、講師等を変更するときは国交省に事務規程の変更届を出す必要があります。
また、航空法第132条の70第2項より登録講習機関(法人)の役員も審査の対象のため、直接的にスクール運営に携わっていなくても、登録後、役員の選任や解任があった場合は、全員届出が必要です。
まとめ:正直、法令遵守は手間がかかる… だから!
登録講習機関は、航空法第132条の50に基づき、国土交通省が行う試験業務の一部である「実地試験」を実質的に代行できる重要な役割を担っています。そのため、法令に則った厳密な運営が求められます。
しかし、不適切な運営を行ったことで、実名公開による厳重注意を受けた登録講習機関も存在します。
技能証明制度は、操縦者の信頼性を確保し、社会的な受容性を向上させる重要な側面もあります。その試験を担う登録講習機関の信頼性が揺らぐと、技能証明そのものの信頼性も損なわれてしまう可能性があります。
一方で、登録講習機関を取り巻く法令は非常に複雑で、頻繁に改正が行われます。そのため、最新の法令に対応しながら運営することは簡単ではありません。真剣に取り組むほどに、日常業務が煩雑化し、教習本来の業務に支障をきたしてしまうこともあります。
そこで、ドロビーは、 付加価値を生まない煩雑な業務に費やすリソースを削減し、登録講習機関が「教習」に集中できる環境を提供します。
これにより、登録講習機関はそれぞれの強みを最大限に発揮でき、ひいてはドローン業界全体のさらなる発展に繋がると信じています。
