行政書士 中島北斗
人手不足や高齢化など農業の抱える諸問題を解決する可能性を秘めているのがドローンです。活用方法は農薬散布に留まらず、肥料、種子、融雪剤の散布、生育の調査等様々です。この記事では必要な許可や指針について解説しています。
国土交通省の許可・承認は必要か
空中散布などにドローンを利用する場合は、基本的には「危険物輸送」と「物件投下」の国土交通省の承認が必要です。
また日の出前に行わなければいけない場合は「夜間飛行」の承認も必要となります。
農林水産省の指針とは?性能確認を受けていなくても農薬散布は可能?
「農業用ドローン○○、農林協が性能確認」というニュースを見たことがあると思います。このようなニュースから、「性能確認をされていないドローンは農薬散布が出来ないのか。」という疑問をお持ちの方もいるでしょう。実際にそのようなご相談も頂きました。
結論から申し上げますと、「性能確認を受けていなくても農薬散布は可能」です。(あくまでも事実を述べております。私の見解は抜きです。)
そもそも性能確認って?
農林水産省では、無人航空機による空中散布の安全性・適正実施のため「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」を定めています。
この中で本件に関係ある事項を以下にまとめます。※農水協とは農水省の外郭団体です。
- 農水協は空中散布を安全に行える人を「オペレーター(技能認定者)」として認定するいう。
- 農水協は空中散布に必要な性能を有する「ドローンを確認・登録」する。←これが性能確認
- 空中散布を行う農家は「事業計画書」を作成し、提出する。
また、同省では空中散布等を目的とした無人航空機の飛行に関する許可・承認の取扱いについてというものを公表しています。
ここでは、国土交通省の用意している申請書の様式1の
- 「無人航空機の機能及び性能に関する事項」の欄には「農水協が性能確認を行った無人航空機を飛行させる旨」を記載すること。
- 「無人航空機の飛行経歴並びに無人航空機を飛行させるために必要な知識及び能力に関する事項」の欄には「農水協が技能認定を行った者が無人航空機を飛行させる旨」を記載すること。
となっています。これらが誤解の原因ではないでしょうか。
法律と指針は違う
以上のような農林水産省から出ている「空中散布等における無人航空機利用技術指導指針」はあくまでも指針で、ドローンで農薬散布を行う場合に守ってくださいというお願いです。逆に国土交通省がする「危険物輸送、物件投下」の承認の必要性は法律で定まっており、ドローンで農薬散布を行う場合は必ず守りなさいというものです。
ここははっきりと区別をすべきところです。
まとめ
以上より、国土交通省の飛行許可・承認を受ければ、「性能確認を受けていないドローンでも農薬散布は可能」「技能認定を受けていない操縦者でも農薬散布は可能」となります。
このことは、国土交通省・農林水産省植物防疫課防除班の担当の方に確認済みです。※大変お忙しいところ丁寧にご回答頂き誠に感謝しております。
注意点
農薬は農薬取締法によって登録が義務づけられ、登録のないものは、製造、販売、使用が禁止されています。また、登録された農薬であっても、農薬容器に貼付されている「表示事項」を守って使用しなければなりません。
以下は私の見解です。
ドローンを利用した空中散布を行う場合は、たとえ性能確認を受けたドローンでなくても、必ず空中散布等における無人航空機利用技術指導指針を確認することをおすすめします。
ここには先ほど述べたこと以外にも、「周囲への事前報告・補助者の設置」の重要性が書かれています。
人、家畜、養蜂所などに大きな影響を与える農薬だからこそ安全な利用は欠かせません。ドローンによる空中散布を適正に行うことは、この分野の発展に大きく寄与することでしょう。
※この記事は平成29年3月11日現在をもとに書かれています。
許可を取得しても注意が必要!
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執筆者:
行政書士 中島北斗
ドローンの規制(改正航空法)が始まった2015年当初からドローン申請業務を行っている行政書士が、ドローン法令の遷移を生で感じていたからこそわかる、リアルで正確性な情報を発信いたします。
ドローン許可取得実績は9,000件、相談実績は11,000件、また50校を超えるドローンスクールの顧問をしています。
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