
行政書士 中島北斗
この記事では、日本全国1年間の包括申請でも「飛行ができない場所」「禁止されている飛行方法」「その対策」などを解説いたします。この記事を読めば、包括申請の注意点が分かります!法令を知らなかったことに起因する事件・事故を未然に防ぐためにも、本ページを参考にして頂けると幸いでございます。
ドローンの包括申請とは?
包括申請とは、一定の要件のもと、日本全国で1年間を限度に、日時と場所を指定せずに申請する方法です。
ドローンの許可申請には、「飛行場所・日時を特定する個別申請」と「飛行場所・日時を特定しない包括申請」があります。
包括申請と個別申請の違い
包括申請と個別申請の違いは以下の表の通りです。
それぞれ飛行の形態や場所に違いがあるため、ご自身の飛行目的に合わせて、いずれか、または両方の許可が必要です。
包括申請 | 個別申請 | |
---|---|---|
飛行場所 | 最大日本全国 | 番地まで住所を特定 |
飛行日時 | 一定の要件のもと、1年間を限度に、日時と場所を指定せずに申請が可能 | 飛行日時を特定した上で、飛行の度に申請 |
飛行経路図 | 不要 | 必要 |
飛行マニュアルによる制限 | 大きい | 小さい |
取得できる許可承認 | 人口集中地区、夜間飛行、目視外飛行、30m接近飛行、危険物輸送、物件投下 | すべての特定飛行 |
趣味飛行の申請 | 不可 | 可能 |
包括申請を取得してもその他規制に注意が必要
飛行場所や飛行日時を特定しない包括申請で許可を取得しても、日本全域どこでもいつでも飛行できるわけではありません。
その理由は、ドローンを取り巻く法令は非常に多く、「航空法、民法、道路交通法、河川法、港則法、自然公園法、各条例等」により飛行が制限されるからです。
【航空法】包括申請でも飛ばせない場所・飛行方法
包括申請でも、航空法上飛行が規制・禁止されているケースがいくつかあります。
航空法による特定飛行の規制
航空法上、特定飛行として以下10個の飛行が規制されています。
このうち、包括申請で取得できる許可承認の種類は「人口集中地区、夜間飛行、目視外飛行、30m接近飛行、危険物輸送、物件投下」の6つとなります。
<飛行場所の規制>
<飛行方法の規制>
包括申請では、「空港周辺飛行、高度150m以上、緊急用務空域、イベント飛行」は取得することができないため、必然的にそれらの場所・方法では飛行させることができません。
「空港周辺飛行、高度150m以上、緊急用務空域、イベント飛行」で飛行を行う場合は、個別申請で許可承認を取得し、飛行を行います。
許可が絶対に取得できない飛行方法
航空法上、以下4つの飛行方法も禁止されています。
これらは許可承認の制度自体がありませんので、ドローン(無人航空機)を飛行させる方は絶対順守が必要となります。
空港周辺飛行、高度150m以上、緊急用務空域、イベント飛行の定義や調べ方、アルコールの定義、飛行前確認の具体例、衝突予防の方法など、詳しい内容は以下の記事を参考にください。
【航空法】包括申請で飛行できない場合の対策
包括申請で飛行できない場合であっても、一部条件下であれば飛行が可能になるケースがあります。
いくつかの対策方法をご紹介いたします。
ドローンのイベント飛行を許可なしで行う方法
飛行予定日まで10開庁日を切っている、飛行許可が間に合わない、申請の要件を満たせないなどの理由で、イベント飛行許可が取得できない場合があります。
そのときは、次の対策が考えられます。
これらの対策について、詳しく解説していきます。
航空法上のイベントに該当させない
関係者のみが参加する催し場所は、航空法上、許可が必要な飛行とはなりません。
ここでいう関係者とは「直接関与者」と「間接関与者」に分類できます。
直接関与者とは操縦者、補助者など無人航空機の飛行の安全確保に必要な要員を指しますので、ここではあまり関係ありません。
「間接関与者」とは「操縦者と共通の飛行目的を持っている者」で①飛行の安全上の従うべき明確な指示及び注意を受けていること。②前号を適切に理解(確認)していること。(言っただけではNG)③飛行の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定することができること。(参加したくなければNOと言えること)をすべて満たす人です。
つまり、イベントの会場にいる方々が「間接関与者」に該当する場合は、許可が不要となります。
「住所を確認し参加者を特定すればイベントにはならない」という解釈がありますが、これは誤りです。理由は住所等で人を特定しても、関係者の定義を満たしていなければ第三者だからです。
100g未満のドローンを使用する
100g未満のドローンは航空法上、無人航空機ではなく模型航空機に該当します。
模型航空機においてはイベント飛行の規制は該当しないため、許可が不要となります。
かなり代替的な案ですが、最近は100g未満のドローンでも高性能なものが出ておりますので、検討の余地はあるかと思います。
屋内イベントに切り替える
航空機は屋内には適用されません。
限定的ではありますが、例えば、屋外で行う予定だったイベントを屋内に切り替えるなどで許可を回避することは可能です。
お祭り等では非現実的ですが、例えば、ドローンの体験会などでは検討の余地があります。
リーガライト行政書士法人は航空法を熟知しており、相談実績も豊富です。
包括申請をご依頼いただいたお客様は「無償付帯行政書士顧問サービス」を利用できるため、困ったときの強力な味方となります。

【注意】係留飛行でもイベント飛行の許可承認は必要
係留飛行と立入管理措置によって、一部の特定飛行は許可承認なく飛行することが可能です。
ただし、イベント飛行については、係留飛行と立入管理措置を行っても許可承認が必要です。
誤りが多い項目ですので、注意しましょう。
両方を行えば、許可が不要となる飛行 | 両方を行っても、許可が必要となる飛行 |
---|---|
・人口密集地上空(DID)における飛行 ・夜間飛行 ・目視外飛行 ・30m接近飛行 ・物件投下 | ・空港等周辺 ・高度150m 以上の飛行 ・イベントでの飛行 ・危険物輸送 ・緊急用務空域 |
空港周辺で許可なしで飛行させる方法
飛行場所が空港周辺に該当するかは、こちらから調べることができます。
実は、地理院地図や飛行計画の通報画面で、空港周辺に該当しているように見えても、許可が不要なケースがあります。
これは空港周辺(緑色)については、すり鉢状になっており、すり鉢の上側が空港周辺として飛行が禁止されているからです。
※紫色については下側も飛行が禁止されています。

このすり鉢までの高さを「制限高」といい、その高度以下であれば許可申請不要です。
当社にてご依頼頂いたお客様には、空港周辺の制限高の調査も無償付帯行政書士顧問サービスで無料で行っております!
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高度150m以上の空域を許可なしで飛行を行う方法
高度は地表から計測しますので、例えば1000mの山から少しでも上げたら許可が必要というわけではありません。
航空法における高度の考え方を把握し、ムダな申請はしなくて済むようにしましょう。
特に山の中でフライトする際に役立ちます。
また2021年9月24日に航空法が改正され、高度150m以上の飛行については一部緩和されました。
規制緩和では、高度150m以上の飛行であっても、建物等の物件から30m以内の空域であれば、飛行禁止空域から除外されました。
つまり、以下画像の場合は、高度150m以上の許可承認が不要になります。

【注意】包括申請でも立入管理措置を行わない飛行は禁止
包括申請においては、立入管理措置が必要となります。
立入管理措置とは「ドローンの飛行経路下において第三者の立入りを管理する措置」をいい、申請方法により具体的な内容が異なりますが、包括申請では以下のいずれかとなります。
包括申請の立入管理措置 | 詳細 |
---|---|
①補助者の配置 | 飛行経路下の監視及び口頭警告 |
②立入管理区画の明示 | 【第三者の立入りを「確実」に制限できることが前提】 ・塀やフェンス等の設置 ・第三者の立入りを制限する旨の看板やコーン等を飛行範囲や周辺環境に応じて設置 |
確実に制限できない場合に補助者を配置しない飛行を行うには、レベル3以上の個別申請が必要となります。
立入管理措置について、以下の記事で詳しくまとめています。
【注意】飛行マニュアルにより飛行できない場所・方法
ドローンの許可申請には、安全な飛行のためのマニュアルが必要となります。
このとき、国交省の公開している航空局標準マニュアル①②を使用することも可能ですが、あくまでも標準的なマニュアルであるため飛行場所や飛行方法が制限されてしまいます。しっかりと読み法令を遵守しましょう。
▼下画像のように「航空局標準マニュアルを使用する」を選択した場合は、飛行場所と方法が制限されてしまいます。

標準マニュアルで飛行が禁止される場所と方法
標準マニュアルで飛行が禁止されるケース
様々な飛行を行う場合は、独自マニュアルを作成することをおすすめします。
以下の記事では、独自マニュアルで変更できる点も含め、飛行マニュアルについて徹底解説をしています。
▼当社では、DIPS2.0にて、飛行マニュアルの選択時に、「航空局標準マニュアルと同等の水準ですか」をいいえにして、詳細を記載し、独自マニュアルを添付しますので、上記飛行が禁止される場所と方法でも飛行が可能となります!

初めて申請される方や飛行経験が浅い方でも独自マニュアルが利用ができるようサポートしておりますので、お気軽にお申し付けください!
【航空法以外】注意すべき飛行場所&その対策
たとえ包括申請で許可を取得しても、管理者・所有者が存在する場合はその方の飛行の承諾が必要です。
特に自治体の承諾なしに飛行をした場合は、厳重注意を受ける場合もあり、氏名・社名の公表の恐れがあります。(例:軍艦島での無断フライト)
ただ実際のところ、ドローンの飛行については、管理機関内で具体的な取り決めが定まっていない場合が多く、調整する人によって結果が異なるケースが多々ありますので注意が必要です。
国・県・市などが管理している場所
公的機関が管理している場所は、各自治体への事前確認が必要となります。具体的には観光地や公園、ダムや港などです。
事前に問い合わせをすると、条例や規則などで飛行が禁止されているかどうかの確認もできるので、思わぬ法律違反を防ぐことも可能です。
【対策】
どこに問い合わせるべきかわからない場合は、その場所を管理する市町村に連絡をしましょう。非常に丁寧に案内をしてくれます。管理者が別に存在する場合も、その団体の連絡先を教えてくれる場合が多いです。
連絡先がわかったら、どのような飛行をするかをまとめた上で、飛行計画を丁寧に伝えましょう。
ちなみにお問合せ先ですが、インターネットでも検索できる場合もあります。(例:一級河川の連絡先)
当社では、「市町村との調整テクニック」や「国立公園の連絡先一覧」など、調整の際に役立つ情報も公開しているので、ぜひご活用下さい!
山林、公園、道路、海岸、港、航路などの管理者の調べ方は以下の記事でまとめています。
道路の上空
道路上で着陸・操縦等をする場合は、警察への道路使用許可申請が必要となります。
一方で、車道・歩道を含め、道路の上空で飛行する場合は道路使用許可は不要ですが、通報リスクを下げるため、事前に警察に連絡しておくことをおすすめしております。
最寄りの警察署は国土情報ウェブマッピングシステムから調べることができます。
個人・民間団体が所有する場所
個人の所有地、お寺やホテルなど、所有者が存在する場所で飛行する際は、その方の飛行の承諾が必要となります。こちらは私人間の調整となるため、飛行可能の判断は所有者に委ねられます。
許可取得後の管理者との調整の際に役立つ情報
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この法律は100g未満のドローンも含め、すべてのドローン等に適用されます。
下の地図は小型無人機等飛行禁止法で禁止されている場所を地図上にまとめたものです。
政府の重要施設
国会議事堂、庁舎、内閣総理大臣官邸、最高裁判所、皇居、政党事務所等の施設、その周囲概ね300mの地域では、ドローンを含む無人航空機の飛行が禁止されています。
原子力事業所
原子力発電所、再処理事業所、研究所等、その周囲概ね300mの地域では、ドローンを含む無人航空機の飛行が禁止されています。
これらの施設付近で飛行させる場合は各管理会社等に問い合わせをしましょう。
【対策】
飛行場所が上記に該当した場合でも正式な手続きを行えば、飛行が可能です。
簡単な流れは「施設管理者の事前の同意を得る→管轄の警察署に必要書類(通報書)を提出する」です。
施設管理者・管轄警察署一覧と手続きの方法
包括申請における手続きの流れ
包括申請を取得してから飛行するまでのおおまかな流れは下記の通りです。
【全体像】ドローンを飛行するまでの流れ
ほとんどの手続きはDIPS2.0で行うことができますが、「機体点検記録、飛行記録、整備記録の飛行日誌」はDIPS2.0ではなく、エクセル等のまとめる必要があることに注意です。
※飛行日誌の作成を行わない場合は、航空法第157条の11に従い、10万円以下の罰金が科せられます。
それぞれの詳しい解説は下記にまとめています。
まとめ
以上、包括申請であっても飛行できない場所・方法です。
包括申請は万能な許可ではないため、航空法、航空法施行規則、飛行マニュアル、各種法令を読み解き、飛行を行う必要があります。
許可を取得しても注意が必要!
ドローンの許可承認を取得した後も、立入管理措置、飛行マニュアルによる制限、小型無人機等飛行禁止法、条例、民法など意外と多くの注意事項が存在します。
このような事項を知らなかったことにより「法令違反をしてしまう可能性」もありますが、逆に全貌がわからず「飛行を躊躇してしまう」方も多いかと思います。
そのようなことがないよう当社では、何ができて、何ができないのかをしっかり伝え、法律の範囲内で最大限ドローンを活用できるよう申請代行を行なっています。
また許可取得後の不明点も解決できるように、包括申請をご依頼いただきましたお客様には無償付帯行政書士顧問サービスが付いてきます!

お客様のDIPSアカウントから申請いたしますので、1年目はしっかりとした知識・申請で許可を取得し、2年目以降はご自分で更新される方もいらっしゃいます!
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執筆者:
行政書士 中島北斗
ドローンの規制(改正航空法)が始まった2015年当初からドローン申請業務を行っている行政書士が、ドローン法令の遷移を生で感じていたからこそわかる、リアルで正確性な情報を発信いたします。
ドローン許可取得実績は10,000件、相談実績は15,000件、また60校を超えるドローンスクールの顧問をしています。
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